Preface of Hokusai Manga volume 4
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物を宣るは言より大なるはなし 形を存るハ畫より善
なるはなしと 宣哉 古人の風姿 古物の雅品は知るものハ
画圖の妙也 今や葛飾戴斗先生 画に堪能にして其
名高く其画を乞ふもの多く 都下の紙これが為に貴し
爾れバ閣筆に遑なく 門人臨本に乏しきを患ふ 先生
これを憐ミて邂逅閑ある毎に山水人物をはじめ、動物
器材に至るまで 随筆して これを写 梓彫て以て門人に授 初学
の階梯たれしむ 其成を綴るに漸々として編をなす 第四編に
及びて 予に序辞を乞ふ 茲においゐて これを熟看に 前の三編
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は密画にして真の如し 四編は草画にして筆力の妙あり
夫絵に畫 図 写の三象あり 畫は畫の総名にして 則画の草也
図ハ是画の行也 写は画の真なるもの也 爾に前の三編は真
行を画 四編に至て 草を筆す 其序の差(たが)ふに惑ふ 先生
これを辨て曰 古人有云 立こと不能ものは行事不能 行事
不能ものは走事不能と 立は真也 行ハ行也 走ハ草也 我是を以
次第とすと 嗚呼 先生の弟子を導也 惇篤なる事 真の
師たり 予此言を感じて 以て此書の序辞とはなしぬ
絳山漁翁識