Preface of Hokusai Manga volume 3

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目にミえぬ 鬼神ハ ゑがきやすく まちかき
人物ハ ゑがく事かたし たとへば 古の燧(ひうち)ふくろ 歌
ふくろも丸角 ゑち川の新製に 及ばす 七五三
の式正ハ 八百善が食次 册に志かざるがごとし
こゝに葛飾の北齋翁 目に見心に思ふところ 筆
を下して かたちをなさゝる事なく 筆のいたる所 かたちと
心を尽さゝる事なし 古れ人々の日用にして偽を
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いるゝ事 あたハざるもの 目前にあらハれ 意表にうかふ
志かれば 馬遠郭煕が山水も のぞきからくりの
三景にをとり 千枝つねのりが 源氏繪も吾妻
錦の紅繪に閉口せり 見るもの今の世の人の
せ智がしこきをしり 古の人のうす鈍なるを思ふ
べし
            蜀山人