Preface of Hokusai Manga volume 7

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きのふは深川のわたり、廣幡の御社に為朝の神のをが
まれさ勢給ふを これかれっそひつれて行つ けふハ橋場の浅
茅が原にほとゝぎすきゝに等友たちのいひさわげば 窓の
もとにのミ日を送らんも餘りにさうざうしくて やをら立出るに
木々の梢は青葉所勢く志げりあひて空も悲とつの緑
なるに白き雲のやうやうさまざまにむらがり出るかたちハげに
あやしき峯といひけんも事わりかなとすずろにさまよひ
ありくほど待乳[マツチ]の山をこえ猿橋をわたるに田鶴の諸聲雲
井にひゞくハ尾張の櫻田なるへし 筑波根の雪ハ日金
峠の旭にかゞやきてこのも かのもに志ろかねを志き住の江
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の枩は三保の浦の霞にかくれて幾世經にけん尋るかた
しあるは久米路の橋に膽を失ひ秋田の蕗に目を驚(おどろ)
かして天地のはかりなく大きなる事を志る 花に紅葉に
目に雪に春章のながめも只こゝもとにあつまりてたぬし
ともうれしともいふはかりなきを小野の瀧のミなぎり落る
音耳にいりて身志ろけば ありし我家の窓のもと
にて枕に勢しは古のふミなりけり
式亭三馬